「まだ希望がなくなったわけじゃない」


先頭を歩く浄火が前を向いたまま言った。


あたしは斜め後ろからその表情をチラチラと盗み見る。


浄火、これでもまだ因業ババのことを信じたいのかな?


島のためを思えばその気持ちも分かるけど、でも・・・。


「たとえ裏で何かが仕組まれていても、オレたちが島から飛び出せたのは事実だ」


意外にも力強い浄火の声。


「それはちっぽけに見えて、実は大きな一歩なんだ。間違いなく足跡をつけることができた」


「浄火・・・・・・」


「ここからさ。ここから始まる。始めることが可能なんだ」


負け惜しみでもなく、悪あがきでもなく。


本気で浄火はそう思っているようだった。


彼は希望を捨てていない。どんな事実を知ることになっても、そこから前進できるって信じてる。


そんな彼の気持ちを知って、なんだかこっちの方が救われた気がした。


・・・・・・へへ。


・・・カッコイイじゃーん。


頬を緩めるあたしを見て、浄火が口をへの字に曲げた。


「・・・なんだよ、ニヤニヤして」

「べーつぅーにぃー。ただ・・・」


素直に偉いと思うよ。浄火のこと。


心の中のその声が、浄火に伝わったようで。


彼は少しだけ頬を染めて、唇の端を嬉しそうに上げた。