「おいおい、そんな焦った顔するなよ。いくら残念だからって」
戌亥が得意気な顔をする。
「分かったか? お前は英雄でもなんでもないんだ。たまたま一番最初に目覚めただけなんだよ」
戌亥と取り巻き連中の蔑んだ声に、あたしのムカつきが増量する。
んもう! なにノンキなこと言ってんだか、この前髪パッツンは!
浄火が心配してるのはそんな事じゃないってのに!
「これからもっと、能力者が出てくるだろうよ。おれだって・・・」
「なに!? お前にも能力が現れてきているのか!?」
心配した浄火が叫んだ言葉に、戌亥の顔がピクンと険しくなる。
「まだ目覚めていないだけだ! 時がくれば、おれだって当然能力者になれるんだ!」
「・・・なんだ。まだ目覚めていなかったのか」
安心した浄火に、ますます戌亥は表情を険しくする。
目を大きく吊り上げ、食ってかかってきた。
「バカにしてるのか!? 自分が能力者だからって偉そうにしやがって!」
「オレはそんなことを言ってんじゃねえよ!」
「おれを見下しやがって! おれだって・・・おれだって!」
怒りに震えた戌亥が拳をにぎり、浄火に殴りかかろうとする。
浄火に届く寸前、あたしは左手で拳をパシッとつかんだ。


