「どこなんだ? オレにも会わせてくれ」
「今はもういない。信子様が全員、向こうへ連れて行ったから」
「信子ババが? 全員、ひとり残らずか?」
「ああ。奇跡が起こった事実を報告しなければならないと言って」
「・・・・・・・・・・・・」
「奇跡を上層部に信じてもらうには、本人たちを見てもらうのが一番だと言っていた」
村人たちは、心底から嬉しそうな笑顔を見せている。
逆に浄火の表情に不安の色がますます濃くなった。
・・・だって、おかしいよ。変でしょどう考えても。
因業ババが島へ出入りするようになった途端、現れ始めた能力者。
しかもその全員が、ババによってあっちへ連れ去られている。
奇跡じゃなくて、何か裏があると考えるのが当然だ。
だけど島の人たちは、誰ひとりとして疑問に思っている様子が無い。
これまでの苦労から解放される喜びが大きくて、物事を冷静に考えられないんだ。
それにおそらく、因業ババの『蜘蛛の糸』の術にかけられているんだろう。
大丈夫なのかな?
そんな不審な能力の目覚め方をして、もし島民の命に別状でもあったら・・・。
・・・能力に・・・目覚めた、者・・・?
(浄火・・・・・・)
あたしは浄火を不安な目で見つめた。


