「・・・これが里緒。こっちが権田原の女当主だ」
浄火があたしとお岩さんを嫌われ系に紹介する。
主さんはスルーされた。
「里緒、権田原、こいつは島の仲間の戌亥(いぬい)だ」
「戌亥・・・」
「オレと同じ、常世島の次の長候補なんだよ」
次の長候補? ・・・あぁ、なーるほど。そーゆーことね?
あたしは改めて戌亥と呼ばれた男の顔を見た。
短くパッツリ切り揃えた髪や、やたら薄い唇はいかにも性格に余裕が無さそう。
それに、厚ぼったい一重まぶたの奥に恨みの感情が見え隠れしている。
つまりこいつは、浄火のライバルなわけだ。
その浄火が突然天内の力に目覚めるわ、島から初めて外へ出て、門川に謁見するわで。
かなり大きく差をつけられてしまった。
外見は余裕顔してるけど、内心では嫉妬の炎がめ~らめら。ってことか。
やだなー、男の嫉妬ってタチが悪くて。
こじらせると女より粘着するんだもん。
特にこいつは、自ら率先してこじらせるタイプよ絶対。
自分のことエリートだと信じ込んでるヤツが初めて石ころにつまずく時って、面倒なんだよねぇ。
自分の不注意はこれっぽっちも認めずに、石ころに対して賠償請求するんだから。
めんどくさいヤツに絡まれてるんだなぁ。浄火も気の時に。


