いつもの見慣れた展開をボーっと眺めてると、足元の主さんが小声でささやいた。
「あたしの姿を見た連中が騒ぎ出すかと思ってたけど、余計な心配だったねぇ」
・・・だね。注意の矛先がいい具合に逸れてくれて助かった。
白ヘビの存在なんて比較にならないくらいの強烈さだもんね。お岩さんって。
開国どころの騒ぎじゃないよ。まさに未知との遭遇。
異星人とのファーストコンタクト並みのインパクトだよ。
「それで、あっちにいるのがオレの嫁になる里緒だ」
「・・・なに!? 浄火の嫁だと!?」
マシンガンの撃ち合いみたいにお岩さんとガンガン言い合ってた人たちが、揃ってこっちを見る。
そしてドドーッと駆け寄ってきて、今度はあたしを取り囲んでしまった。
う、うわ? ちょっと? 皆さん、そのギラついた目はなんですか!?
「これが浄火の嫁かあ!」
「良かった! こっちはちゃんとした人間だぞ!」
「まさか神の能力を持った娘が、島へ嫁いでくる日がやってくるとはなぁ・・・」
好奇心をむき出しの目が、あたしの頭のてっぺんから足のつま先までジロジロ品定め。
ち、違うの! そうじゃないのよ!
「あの、あたしはお嫁に来たわけじゃ・・・」
誤解を解こうと思っても、周囲の熱気と盛り上がりのせいでまるで話を聞いてもらえない。


