「おお、会ったばかりなのに、けっこう大胆だな。オレの嫁は」
「小娘! なにをしておるか! はしたない!」
「わざとじゃない! 足がしびれて動けないの!」
「情けない! さっさと立たぬか!」
「ひーヤメて! いま足に猫パンチしないで爆発しちゃうー!」
「ずいぶん生きのいい猫だな。毛並みもいいし」
言うなり彼は、絹糸の首根っこをヒョイとつまみ上げた。
顔の高さまで持ち上げ、しげしげと観察する。
絹糸はプラプラ揺らされながら、牙を剥いて叫んだ。
「なにをするか! 我を離せ!」
「目は純金色。毛色は宝石色で、おまけにしゃべる猫か。こりゃ高く売れそうだ」
「この・・・無礼者めが!」
絹糸の目の色が濃くなって、毛並みがザワザワと逆立ち始めた。
・・・やば。キレて変化しかけてる。
こんな公式な場所で変化なんかしたら、後で当主たちからどんなイチャモンつけられるか・・・。
「絹糸! だめーー!」
「うがああーーーーー!」
突然しま子が唸り声をあげ、彼に向かって襲い掛かった。
あたしと絹糸の様子を見て、こいつは敵だと判断したらしい。
あたしたちを守るべく、鬼の爪を振りかざして切り裂こうとした。
うわあ! こっちもキレてるし!
しま子、襲っちゃだめえー!
しま子に手を伸ばし、止めようとしたその瞬間・・・・・・
―― ゴオォォォッ!!
突然、しま子の全身が紅蓮の炎に包まれてしまった。
しま子はのけ反り、悲鳴を上げて苦しみだす。
こ・・・この炎は・・・・・・
滅火の炎!?


