ふと気づくと、絹糸が彼の手にベシベシと猫パンチを食らわしている。
「ええい! 年頃の娘に対して、何となれなれしい! 手を離せ!」
「なんだあ!? この猫しゃべってるぞ!」
「離せと言うておろうが!」
そ・・・そうだ。
あたし門川君の目の前で、他の男に手を握られてる!
「やだ、ちょっと離してよ!」
慌てて手を引っ込めようとしたけど、離してくれない。
「恥ずかしがるなよ、オレの嫁」
「恥ずかしがってない! 嫌がってるの!」
「なにが嫌なんだ? オレの嫁」
「ヨメヨメ連呼するな! あたしの名前は嫁じゃない! 里緒よ!」
「里緒、か。良い名だなあ。可愛いお前によく似合っている。さすがオレの嫁」
「か、可愛いって・・・!」
「お前は名前も姿も、全部が可愛いんだな」
―― かああぁぁぁ・・・!
頭と顔に、同時に血がのぼった。
か、門川君が、すぐそこにいるってのに、この男・・・!
顔がジリジリ火照って、額にドッと汗が噴き出てくる。
恥ずかしいのかムカついてるのか、もう頭の中がゴチャゴチャだ。
「離せって言ってるでしょ!?」
手を振り払い、立ち上がろうとした時、ビリビリッと足に衝撃が走った。
下半身が別の生き物みたいに痙攣してる。
しまった。正座のせいで足がしびれた!
急に動いたせいで筋肉が悲鳴を上げてる!
ぎゃああ! も、悶絶~~!
あたしはそのまま、彼のヒザの上にガバァッと倒れ込んでしまった。
ひいぃぃーーーーー!
足が・・・足が・・・動かないよぉーー!!


