白い尾っぽを両手でしっかり握りしめて縋るあたしに、白けた声で主さんが答える。


「これ、その手をお放し」


「嫌! なにがあっても絶対この手を放さない!」


「安っぽい恋愛ドラマみたいなセリフを吐くんじゃないよ。手を放してもらわなきゃ治癒できないだろ?」


そう言って主さんはスルスルとお岩さんに近づいた。


小さな顔を近くに寄せて、もう半分以上も透けてしまっている体の様子を伺っている。


あたしは息を凝らして真剣に眺めていた。


きっと大丈夫だよね? お岩さんは助かるに決まってるよね?


しま子もペタンと正座して、両手を必死にこすり合わせて祈りながら見守っている。


「・・・ああ、これなら簡単に治せるよ」


「ほんとっ!?」


「見たところ、ケガや病気じゃないからね。こりゃあ、体の中に異質なものが入り込んでいるのさ」


主さんの全身の金の筋が淡く輝き出し、術が発動し始める。


「それを退けりゃいいんだよ。退魔はあたしの専門だからね」