緊迫しきったシーンに不似合いな、のんびりした声。


スルスルと衣擦れのような音が近づいて来る。


「仕方ないねぇ。どれ、あたしが一肌脱いでやるとするかい」


それは、一匹の小さな白いヘビだった。


背中には、極細の美しい金の筋。


そしてルビーのように輝く濃紅の目。


長ニョロ系が苦手なあたしですら見惚れるほどの綺麗な姿。


気風の良い、江戸っ子姐さん口調のこの白ヘビは・・・!


「あの時以来だね。あたしを覚えてるかい? 天内の小娘」


退魔の能力を持つ、門川の沼の主!


白妙(しろたえ)さんだ!


鬼ババの奥方の反乱事件以来ずっと姿を見せていなかったのに、どうしてここに!?


・・・・・・いや、今はそんなことよりも!!


白妙さんは、治癒の能力も使えるんだ! 


やったー! 救いの女神さまの降臨だーー!!


「白妙さん! 会えて嬉しいよー!」


「・・・あたしゃ帰るよ」


「ぎゃー! 待って待ってごめんなさい!」


久しぶりだから忘れてた! 白妙さんって名前呼ばれるの大嫌いだったっけ!


わざとじゃないのよ! ちょっと再会までインターバル開き過ぎたからウッカリしただけ!


土下座でも罰ゲームでもなんでも言うこと聞くから、お願い見捨てないで!