「里緒、やれ! ぶちかませ!」
「うがあぁぁーー!」
浄火としま子が景気よく声を上げる。
ヘビ少女も真剣な顔で、あたしの術の発動を見守っている。
みんなの期待を背負ってあたしの意思は燃え上がった。・・・任せて!
天内の両目が、ウツボの中の黒い渦を捕らえる。
この勝負・・・もらったあぁぁーーー!
―― ボッ・・・
「・・・・・・へ?」
「・・・なんだありゃ?」
「うああ?」
「・・・??」
自分の発した滅火の炎を見て、あたしは自分の目を疑った。
浄火もしま子もヘビ少女も、完全に気抜けしてウツボを眺めている。
炎は・・・確かに黒い渦を的確にとらえ、ウツボを燃やしている。
燃やしてるんだけど・・・・・・
「あれ・・・マッチの火か?」
ポカンと見つめたウツボの、尖った鼻面の先っぽ。
その一点で小さな火がチロチロと燃えている。
あれじゃまるでバースデーケーキのロウソクの火だよ。
フッと息を吹きかければ、ほんの一瞬で消えてしま・・・。
―― フッ・・・
ウツボの鼻先の炎が、風の勢いに揺らされあっけなく消えるのを見てあたしは叫んだ。
「な・・・なんでええぇぇーー!?」


