―― ガシッ!
手首を力強く握りしめられ、落下がガクンと止まる。
見ればしま子の大きな片手が、あたしの手首とお岩さんの手首を一緒につかんでいた。
もう片方の鬼の爪は、船の太い帆柱に深々と突き刺さっている。
間一髪。ほとんどブラ下がるような形で、しま子とあたしとお岩さんは海への転落を免れた。
遥か下のオーロラ色に揺らめく海を見て背筋がゾォォッとする。
た、助かった! ありがとうしま子!
「・・・そうだ、浄火! 浄火は!?」
「ここだ、里緒!」
あたし達よりもう少し下方で、浄火の体がプラプラ揺れている。
飛び出た床板に尾を巻き付けたヘビ少女が、両手で浄火の両手首をしっかりとつかんでいた。
「浄火、ケガはない!? 大丈夫!?」
「一応まだ大丈夫だが、すぐに大丈夫じゃなくなりそうだぞ!」
浄火は下の海を真剣な表情で見ていた。
見れば海の表面に、プカプカと何かが無数に浮かんできている。
なんだろう? あれは・・・・・・
「・・・・・・ヘビ!?」
あれはこの船の、船底部分のヘビだ! あんなにたくさん・・・全部、死んでいるの!?
この船を支える重要なヘビたちが、あんなに死んでしまったら・・・!


