神様修行はじめます! 其の四


―― ガシッ!


手首を力強く握りしめられ、落下がガクンと止まる。


見ればしま子の大きな片手が、あたしの手首とお岩さんの手首を一緒につかんでいた。


もう片方の鬼の爪は、船の太い帆柱に深々と突き刺さっている。


間一髪。ほとんどブラ下がるような形で、しま子とあたしとお岩さんは海への転落を免れた。


遥か下のオーロラ色に揺らめく海を見て背筋がゾォォッとする。


た、助かった! ありがとうしま子!


「・・・そうだ、浄火! 浄火は!?」

「ここだ、里緒!」


あたし達よりもう少し下方で、浄火の体がプラプラ揺れている。


飛び出た床板に尾を巻き付けたヘビ少女が、両手で浄火の両手首をしっかりとつかんでいた。


「浄火、ケガはない!? 大丈夫!?」


「一応まだ大丈夫だが、すぐに大丈夫じゃなくなりそうだぞ!」


浄火は下の海を真剣な表情で見ていた。


見れば海の表面に、プカプカと何かが無数に浮かんできている。


なんだろう? あれは・・・・・・


「・・・・・・ヘビ!?」


あれはこの船の、船底部分のヘビだ! あんなにたくさん・・・全部、死んでいるの!?


この船を支える重要なヘビたちが、あんなに死んでしまったら・・・!