そんなバカなと思いながら目を凝らし、もう一度確認する。
・・・間違いない。体全体の色素が抜け落ちていくように少しずつ薄くなっている。
皮膚の色や髪の色がどんどん淡くなり、ぼやけていく様を見ながら浄火に叫んだ。
「どういうこと!? これ、なんなの!?」
「分からねえ! 海から生還したヤツを見るのはオレも初めてなんだ!」
「まさかこのまま消えて無くなるなんてこと、ないよね!?」
「だから、オレにも分からねえって!」
これが時空の狂った海に身を浸した代償なの!?
まさか、こちらの次元に存在できなくなるとか!? ・・・そんな!
叫んでいる間にも待ったなしに色素は抜け落ちていく。
なんだか体の輪郭すらもぼやけてきているようで、あたしは心底焦った。
どうしようどうしよう! 今すぐなんとかしないと!
このままじゃ本当にお岩さんが消えてしまうよお!
―― ガックーーーン!
不意に船体が、今にも引っくり返りそうに大きく片側へ傾いた。
全員が床に倒れ込み、あっという間もなく片寄った側へと転がるように滑り落ちる。
砕けた甲板の木片がザザァッと音をたて、雪崩のように海へと滑り落ちていった。
きゃああ! ナナメ下45度!? ダメ、耐えられない! これ絶対落ちるぅ!


