「冷静になれ里緒! この海へ落ちたら二度と助からねえんだぞ!?」
「その海にお岩さんが落ちたのよ!」
「分かってる! だから権田原は、もう・・・」
「それ以上言ったら、あんたをぶっ殺すわよ!?」
お岩さんはね、あたしの助けを待っているの!
だって約束したんだもの!
あたしが、何があっても絶対にお岩さんを守るからねって!
だから、だから・・・だから・・・
「あたしは見捨てたりなんか、しない!」
片足を前に振り上げ、かかとで浄火のスネを強く蹴った。
浄火が怯んだ瞬間、軽く屈んで反動をつけて、後頭部で浄火の顔面に頭突きをする。
「う・・・!」
浄火が反射的にあたしから両腕を放した。
解放されたあたしは、海に飛び込もうと船の縁に手をかける。
しま子がすぐ背後で、大慌てで何かを叫んでいた。
「うがあ!? がああぁー!」
「とめてもムダだよ、しま子!」
「がががあうぅぅーーーっ!」
しま子は海を指さしながら、懸命に何かを伝えようと身振り手振りであたしにアピールしていた。


