神様修行はじめます! 其の四


「・・・お岩さあぁぁんーーー!」


お岩さんが落下した後を追うように、ウツボとヘビ少女が海へ落ちていく。


それはまるで作り物の動画のワンシーンのように思えた。


巨体が飲まれたというのに、水音は少しも響かないし水しぶきもたたない。


空気に吸い込まれるように、全員の姿が消えていく。


その異様な光景こそが、この海の恐ろしい奇怪さを知らしめていた。


こんな不気味な海の中へ、お岩さんが落ちてしまったなんて!


「嘘だ。嘘だ。嘘だ。・・・こんなの、嘘だ!」


あたしは繰り返し叫びながら船の端に駆け寄り、下を覗きこむ。


揺らめくオーロラの光の束が、何事もなかったように静かに波打っている。


底の底まで透けて見えそうなのに、お岩さんの姿はどこにも見当たらなかった。


でもいま落ちたばかりなんだから、きっと近くにいるはずだ!


すぐそこに・・・すぐそこにお岩さんがいる!


あたしの助けを信じて待っているはずだ!


「待っててお岩さん! 今行くから!」


夢中で海へ飛び込もうとするあたしの襟首をつかみ、誰かが思いっきり後ろへ引っ張った。


「里緒、死ぬ気か! やめろ!」


ヨロけたあたしの体を、浄火が後ろから羽交い絞めにした。


あたしは両手両足をジタバタさせて、死にもの狂いで抵抗する。