神様修行はじめます! 其の四


「お、お岩さんー! 早く逃げてぇーー!」


あたしの悲鳴に、我に返ったお岩さんが弾かれたように逃げ出した。


でもあれじゃ絶対に間に合わない! 巻き込まれる!


あたしも無我夢中で走り出しながら、全意識を集中して気を高めた。


こうなったら滅火の力でウツボを滅して・・・!


「里緒! よせ!」


あたの術が発動する気配を察知したのか、浄火が叫んだ。


「ヘビ女が巻き添えをくらっちまう!」

「・・・!」


あたしの足と、気の集中がビタリと停止した。


そ、そうだ。いま術を発動したらヘビ少女も一緒に滅してしまうかも。


ヘビ少女の存在なしにこの海は渡れない。


(ああ、でも、このままじゃお岩さんが!)


それは時間にすればほんの一瞬の逡巡だったろう。


でも・・・その一瞬が命取りになった。


―― グラリ・・・!


ウツボとヘビ少女が端へ移動した重量で、船が大きく傾いた。


「きゃあああーーー!」


船の端ギリギリを走っていたお岩さんはバランスを崩し、悲鳴を上げながら海へと落下していった。