「里緒は怖がりで可愛いなー。そんな化け物なんかいるわけねえって。実際、出てこなかったし」


「・・・それって結界張ってたから、出てこなかっただけじゃないの?」


「ん? まあ、逆の理屈でいえばそうも言えるかもな」


「おい! なによそれは!」


そんなノホホンとした言葉に、さすがにあたしの頭は沸騰した。


「逆の理屈も反転もない! 普通に考えればその結論にたどり着くじゃん!」


「心配すんな。どっちにしろもう島に着くんだから」


ノホホン浄火の言う通り、船は着々と島に向かって進んでいる。


切り立った岩場ばかりが目立つ島は、もう目と鼻の先だった。


どうやら無事に渡れたようで、あたしはホッと胸を撫でおろす。


伸びかけた不安の芽が、胸の中でシオシオと地中に隠れていった。


「ああ、良かった。一刻も早く島へ・・・」


―― ユラリ・・・


「・・・・・・!?」


突然、目の前のオーロラの波が大きく盛り上がった。


海の底の方から、何か巨大なものが浮上してくるような大波に船が乗り上げる。


船首のヘビ少女の表情が一変し、シャアァッと舌を出して警告音を発した。


あたしの胸に、不安と嫌な予感が通勤ラッシュのようにドッと押し寄せる。


・・・来るの? ゴール直前で来るの? やっぱり来ちゃったのーー!?