「お前ら、海を見たことねえのか?」


「海なら見たことあるけど、アレはない!」


「だから、あれが海だろ?」


通じない会話を続けているうちに、船はどんどんオーロラの海へと近づく。


ついに船首が光の海へと乗り出した時、あたしのドキドキは最高潮に達した。


うわあ、うわあ、うわあ!


―― ふわり・・・


色づく空気の塊の上に乗り上げたような、ふわっとした感触。


まるでメリーゴーランドのような優しい揺れを感じる。


甲板から下を覗きこむと、透き通る光のヒダがヒラヒラと靡いていた。


向こうが透けそうなほどの透明感なのに、底は見通せない。


そこがまた、神秘的な雰囲気をかもし出している。


「あぁ、なんて素敵なんだろう・・・」


「状況も忘れて、見入ってしまいますわ」


お岩さんとふたり、身を乗り出すようにウットリと下を眺め続ける。


ずっと見ていても飽きないほど美しい。


「ふたり共、うっかり落ちたら二度と上がってこられねえからな。気を付けろ」


浄火があたしたちにクギを刺した。


「忘れたのか? この海は、ただの海じゃないんだからな」


「あ、そ、そうだったね。つい・・・」