神様修行はじめます! 其の四


音もなく近づく相手に、お岩さんも浄火も気がつかない。


「危ない! 後ろ!」


あたしの叫び声にふたりが振り向いた時には、もう遅かった。


敵は浄火の胸元へと、長い黒髪をなびかせてまっしぐらに襲い掛かる。


「うわっ!?」

「浄火!」


浄火が・・・やられる!


あたしは浄火に向かって手を伸ばし、必死に意識を集中した。


待ってて! 今すぐ滅火の力を発動して助けるから!


「今すぐ助け・・・!」


「あぶっねーなー! いきなり飛びついてくんなよー! お前はー!」


「・・・・・・はい?」


襲われてるくせして、緊迫感まったくゼロの浄火の声。


見れば敵は、浄火の胸元にベタッとくっ付いて、甘えるように顔を擦り付けている。


浄火は大型犬に抱き付かれたみたいな笑顔で、敵の頭をわしわしと撫でていた。


・・・・・・なに? 


なんなの? この、実に微笑ましい光景は・・・?


お岩さんも浄火の隣で、この状況をキョトンと見ている。


あたしは人さし指で敵を指しながら、恐る恐る浄火に質問した。


「浄火、それ・・・・・・なに?」

「ああ、こいつはヘビ女だ」

「ヘビおんな?」

「この宝船の、まあ、ヌシみたいなもんだな」


主? こいつが、この船の主?