―― ブウンッ! ブウンッ!
自分の体が空を切る音に、悲鳴はかき消された。
すごい遠心力! 手足が勝手にバンザイ状態になってしまって、身動きできない!
グルグル回転する甲板の上に、大騒ぎしてる浄火やお岩さんの姿が見えた気がするけど・・・
回転速度が速すぎて、もう何がなんだか・・・!
脳が状況を認識しきれずに真っ白だ。
ただ、髪の毛がぜんぶ毛根から引っこ抜けそうな勢いで、自分がブン回されていることだけは分かる。
い・・・今、足首に絡まる尾を放されたら・・・!
―― ブウゥンッッ!
ひときわ強力な勢いで大きく振り回され、あたしの体は船の外側まで飛び出した。
目もくらむような高さの下の地面。眼下に広がる景色。
足首のロープひとつが命綱の天然バンジージャンプだ。
(ひいいぃぃーーーーー!!)
意識を喪失しそうな恐怖に心臓を縮ませていると、恐れていた感覚を足首に感じた。
尾が・・・ヘビの尾が、解ける!?
何十にも巻き付いていた尾が、スルスル・・・っと素早く抜けていく。
空を飛ぶこの身の、唯一の命綱が・・・!
「嫌あぁ! 放さないで! お願い放さないでーー!!」
目の前が暗くなるほどの恐怖に悲鳴も凍り、全身から冷や汗がドッと噴き出た。


