―― ズズズ・・・ギギギ・・・
巨大な宝船は大きく軋む音をたてながら、地面の上をひた走る。
なにしろデカいもんだから、小回りがまるできかなくて。
ちょっとした木なんかの障害物は、その巨体でなぎ倒しながら進んでいた。
バキバキと響く破壊音も迫力満点。耳障りなほどだ。
「海まで、そう時間はかからないはずだ」
浄火が進行方向を眺めながら言った。
そしてチラリとお岩さんに視線を向ける。
「・・・本当にいいんだな? これで」
セバスチャンさんにも、里の誰にもなんにも言わずに、こんな暴挙に出てしまった。
その事を言っているんだろう。
「ええ、いいのですわ。これで」
お岩さんはあたしの胸から顔を離し、うつむきがちにゴシゴシ手で頬を拭いた。
そして、スッと前を向く。
その目は迷い無く、真っ直ぐ進むべき方向を見ていた。
「そうか。・・・なら、いいんだ」
「あのさ、あたしさ、実はこっちの世界の海って初めてなんだよねぇ!」
重くなってしまった場の空気を変えようと、あたしはわざと明るい声を出した。


