あたしと彼は、すれ違ってしまった。
彼の心情は理解できたけど、どうしてもふたりの心は重ならなかった。
だからあたしに向かって手を伸ばす彼を、置き去りにするしかなかった。
「お岩さん・・・」
あの時のお岩さんがしてくれたように、あたしも彼女の体を強く抱きしめる。
・・・同じだね。おんなじなんだ。
あたしたちは同じだよ、お岩さん。
お岩さんの気持ち、手に取るように分かるよ。
「あたしがついてるからね。あたしがきっと守るからね。安心して」
「アマンダ・・・!」
お岩さんも、あたしの体をギュッと抱き返してきた。
腕にこめられた苦しいほどの力に、彼女の心の痛みと決意が現れている。
・・・・・・常世島へ、行くんだ。
行って事実を手に入れるんだ。
たとえそれが望まない現実であったとしても、確認するより他にない。
確かな答えを手に入れなければ、一歩も前へは進めないから。
前へ進めなければ・・・心は、永遠にすれ違ったままになってしまうから・・・。
あたしとお岩さんは、お互いを支え合うようにずっと抱きしめ合っていた。
そんなあたしたちを乗せて、船はあっという間に里から遠ざかる。
そして海へと向かって行った。
まだ見たことのない、こちらの世界の不思議な海へと・・・。


