「軽挙妄動は、おつつしみ下さい! お戻りください!」
懸命に船に追い付こうとするセバスチャンさん。
でも意外なほど船の速度は速くて、どんどん引き離されていく。
お岩さんは、泣くのをこらえながらその姿をじっと見つめていた。
「ジュエル様!」
離されながらも彼は諦めない。
「ジュエル様! ・・・岩!」
大声で叫びながら、必死になって全力で走り続けている。
「岩! 戻って来い! バカな真似はよせ!」
「・・・嫌ですわ! 戻らない!」
お岩さんが激しく首を横に振り、拒絶した。
「あたし・・・あたし、遥峰のことが好き!」
涙声でお岩さんが叫び返す。
「だから行くの! 行かずにはいられないのよ! 許して!」
セバスチャンさんが走りながら片手で素早く印を切った。
―― ボコボコッ!
彼の足元の地面を割り、植物のツタが勢いよく飛び出す。
ビュルルッと風を切る音と共に、ツタが船へ向かって伸びてくる。
その先端が、今にも船尾に絡まる瞬間・・・
船底のヘビたちが、鋭い牙でツタをズタズタに噛み切った。


