「おお! 待ちかねておったぞ! 天内の娘よ!」
一歩踏み入れるや否や、座敷の前方から声をかけられた。
「よしよし、よくぞ参った! 天内の娘!」
「遠慮せずともよい! さあ中へ中へ!」
「ほれ、もそっとこちらへ来るがよい!」
・・・・・・・・・・・・。
へ?
あたしはその場に立ち止まり、キョトンと目を丸くした。
なぜか当主たちが、すっげー上機嫌な表情であたしを見てる。
な、なに? この全員一丸となった歓迎ムードは。
まるで国際大会で優勝した選手の、凱旋報告会だよ。
・・・・・・うさんくさい。
ひじょーに、うさんくさい。
中年男の微笑みって、ますます気持ち悪いんですけど。
すぐそばの空いている場所に、凍雨くんが移動して座った。
その隣に、イラついてる塔子さんと、心配顔のマロさんが座っている。
塔子さんが、さっそく小声で凍雨くんに噛みついた。
「ちょっと! 逃がせって言ったのに、なんで連れてくるのよ!」
「そのつもりだっだけど、天内さんが言うこと聞いてくれなかったんです!」
「んもう! どうするのよ!」
塔子さんがあたしをギロッと睨んで、口パクした。
『こ・の・バ・カ・む・す・め・がぁ ! 』
う・・・怖い。塔子さん、シンメトリー青筋立ってる・・・。
だってぇ、門川君を置いて逃げ出すわけにいかないよ!
そんな怒んないでよぉっ!


