「分かってるよな? オレが乗らなきゃ島へは誰も渡れな・・・」
「てええぇぇーーいぃ!」
―― ビシィィッ!
お岩さんが奇声をあげて、あたしの手をつかんでいる浄火の手首に空手チョップした。
浄火は悲鳴を上げて手を離し、後ずさる。
「・・・いってええーーー!」
「感心するほど恥知らずな男ですわね! 人の弱みに付け込む極悪人!」
「な、なにすんだよ怪力女!」
「権田原の女は、農作業で鍛えてますのよ! ヘタに手を出したら、あなた死にますわよ!?」
「オレはお前にゃ一切、手なんか出してねえよ!」
「アマンダ、迷うことはありませんわ。門川へお戻りなさい」
お岩さんは浄火へ向けていた険しい表情とは一変して、穏やかにあたしに話しかけてきた。
「島へはわたくしひとりで行きます。これはわたくしの問題ですもの」
「待て、岩よ! お前が島へ行くことも許さぬ!」
「ベルベットちゃん、何と言われようとわたくしは行きます。行かなければならないの」
「頼むから冷静になれ! 岩!」


