神様修行はじめます! 其の四


「おい、せっかくオレが渡した手みやげの茶碗、割ったのかよ。あの男」


浄火があたしの隣に立ち、顔を覗き込んでくる。


「意外と失礼なヤツなんだな。あのメガネ当主」


「・・・・・・・・・・・・」


浄火の声は聞こえているけど、耳の奥まで届かなかった。


あたしは上の空で返事もせずにボウッと突っ立ったまま。


目は浄火の姿を映していても、心は完全に門川君の姿を追っている。


そんな『心ここにあらず』の様子を探るように見ていた浄火が、不意にあたしの手をギュッとつかんだ。


その力の強さにハッとして、あたしはようやく目の前の浄火の顔を見る。


「さあ、ぐずぐすしないで島へ行くぞ。里緒」


「あ・・・・・・」


「早くしないと子作りマシーンが船で帰っちまうぜ? やるなら今しかない」


そうだ。船を手に入れるのは今しかない。


今を逃せば二度と島へは渡れないだろう。


あたしは門川君への思いと、自分の置かれた現状に心が乱れた。