お岩さんのためなら、コソドロの真似でもなんでもするもん。
違法行為なんてへっちゃらよ。
そもそも子作りマシーンの方から吹っかけてきた、ルール破りなケンカじゃん。
こっちが文句言われる筋合いなんか無いねー。へっ。
「船ひとつ貸さないケチくさい年寄りが、若い嫁なんか欲しがるなって言ってやる」
「大問題になるわい! 里にどれほどの迷惑がかかるか、考えんのかお前は!」
「里の人たちだって分かってくれるよ」
くちばしをパカパカ開いて激怒する絹糸。
その怒り顔と鼻先を突き合わせながら、あたしは言った。
お岩さんを犠牲にして、自分たちだけが助かろうなんて誰も思わない。
権田原はそんな一族じゃないよ。
全員一丸となって抵抗してくれるはずだ。
・・・本来ならそんなこと、セバスチャンさんだって分かってるはずなんだ。
ただ、彼の心に深く突き刺さったトゲが、彼を迷わせている。
そのトゲを抜いてあげることができたなら、その時はきっとセバスチャンさんだって・・・。
「だからこれは、里のためでもあるんだよ。絶対にやり遂げなきゃ!」
―― ブツッ!
絹糸の怒りの一撃。
あたしの鼻の頭に、絹糸のくちばしの先端が思い切りめり込んだ。
激痛に思わず悲鳴を上げる。
「いってーーーーー!」
猫パンチできないと思って油断したー!


