能力を持たずに生まれたせいで、常世の島へ行ってしまった女性。
まるで何かの符号のように、常世島という場所と言葉が、あたしの胸に深く響いた。
浄火がお岩さんを責めるような目をする。
「能力が無いからって、ここから追い出したのか?」
「なに仰ってますの!? そんな非道な真似を、われら権田原の一族がするわけありませんでしょ!?」
お岩さんが浄火をギッと睨みつけた。
浄火も負けずにキツイ目をしてお岩さんを睨み返す。
「じゃあ、なんでだよ?」
「自分から出て行ったのですわ」
「・・・自分から?」
「彼女を責める者など、ひとりもおりませんでしたわ。それでも・・・」
お岩さんの目から険しさが消え、悲しそうな色が浮かぶ。
「彼女は、自分自身を責めたのです。そしてある日、みずから常世島へと渡ってしまったのですわ」
自分自身を・・・責めて・・・?
あたしには、なんとなくその人の気持ちが分かるような気がした。
あたしが、ある意味こっちの世界では異端者であるせいかもしれない。
能力の無い者が、普通に能力を持つ者たちに囲まれながら生きていく。
それは、あたしたちの想像以上に辛いことなのかもしれない。
権田原の民は優しいから、本当にその人を責めたりなんか一度もしなかったろう。


