「浄火、あんた見た目と違ってキレるじゃん!」
「だろー? オレは頼りがいのある男なんだよ。だから安心して嫁に来い!」
「なに調子に乗ってんのよ。それは嫌」
「それはダメですわ」
「だよねー、お岩さん」
「そうではなくて・・・産婆の件がダメなのですわ」
「え?」
みんなが揃ってお岩さんに注目した。
せっかく明るい表情になりかけていたお岩さんが、ガックリとうな垂れてしまっている。
「ダメって・・・なんで?」
「産婆がいないのですわ」
「権田原に産婆さんはいないってこと?」
「そうではなくて、当時の産婆が、この里から出て行ってしまったのです」
「出て行ったって、どこへ? そこに訪ねて行けばいいだけじゃん」
「・・・・・・・・・・・・」
お岩さんは一瞬口ごもり、目を伏せながら答えた。
「常世(とこよ)島ですわ」
「えっ!?」
また意外な言葉に、あたしは面食らってしまった。
常世島に行った? じゃあ、その産婆さんってもしかして・・・。
「そうですわ。神の一族の能力を持たずに生まれた者だったのですわ」


