・・・うん。あの因業ババ相手に、ヘタに手ぬるい反撃は禁物。
これはかなり、面倒なことになりそうだ。
それに考えてみれば、あたし、逃げるわけにいかないよ。
きっとこれからまた、戦いが始まる。
門川君が狙われることになるんだ。
「それが分かっていながら、あたしだけ逃げるわけにいかないね」
「そうじゃ。どんなワナであろうと、受けて立たねばならぬ」
「ち・・・ちょっと待ってください!」
凍雨くんが会話に割って入った。
「ふたりとも、事情を知らないからそんな事が言えるんですよ!」
そしてガバッと立ち上がり、あたしの腕をつかんで引っ張る。
「逃げましょう天内さん!」
「やだ。逃げない」
「天内さん! お願いですから言うこと聞いてください!」
「あたしの役目は、門川君を守ることなんだよ?」
「分かってます! でも今回は逃げてください!」
「いったい何があったの? 事情を話してよ」
「そ・・・それは・・・・・・」
あたしの腕をつかむ、凍雨くんの手の力が急にゆるんだ。
そして視線をそらして、もごもごと口ごもってしまう。
こりゃあ・・・・・・よっぽどだね。
あたしにとって、かなり良くない状況になっているんだろう。
でもそれはきっと、門川君にとっても良くない状況だ。
やっぱり逃げるわけにはいかないよ。凍雨くんの気持ちは嬉しいけど。
「無理に説明してくれなくていいよ。聞いても聞かなくても、同じだもん」


