「産婆だよ」
突然出てきた聞き慣れない言葉に、あたしはホケッとしてしまった。
は? サンバ? さんばって何それ?
「サンバって、サバのこと?」
「誰が青魚の話をしてんだよ。取り上げ婆だよ、取り上げ婆」
「取・・・ますます分かんないんだけど」
「なんだ、里緒は産婆を知らないのか? お産の手助けをする女の人の事だよ」
ああ、なんだ助産師さんのことか。
それならそうと言ってよ。
『産婆』だの『取り上げ婆』だの、どっかの妖怪の一種かと思っちゃったじゃん。
「なるほど。産婆は、後々のために赤ん坊の父親のことを聞くものじゃからな」
感心する絹糸に、浄火が得意そうに答える。
「だろ? しかも役目柄、聞いたことは誰にも口外しねえから」
「うむ。心に重荷を抱えた妊婦であれば、つい打ち明けてしまうやもしれぬのぅ」
それってつまり、医者の守秘義務みたいなもんか?
医者と患者の信頼関係のうえでなら、確かに可能性はあるかも!?


