あんたの頭をぶん殴って、記憶喪失に陥る手助けしてやってもいいんだからね!?


「お前、やはりここにおったのか」


手の中の絹糸が不機嫌そうな声で浄火に話しかけた。


浄火が驚きの声を上げて絹糸をまじまじと見つめる。



「うわビックリした! 鳥がしゃべってるぞ!」


「信子と一緒に姿を消したと思ったら、小娘の尻を追いかけて来よったか」


「お前、誰だ? オレはメジロに知り合いはいねえぞ?」


「我はメジロではない! ウグイスじゃ!」


「ちょっと絹糸、あんたはウグイスじゃなくて猫でしょうが」


「そ・・・そうであったな」


「絹糸ったら、ホントにこのままだとウグイスと同化しちゃいそうだね」


「その心配はない。時間が経てば強制的に元に戻るようになっておる」


「あなた、さっきの発言はどういう意味ですの?」


お岩さんが、もどかしそうに会話に割り込んで浄火を問い詰めた。


さっきまで絶望に染まっていた目に、ほんのわずかに希望の明かりが灯っている。


「知っている可能性のある人物って、どういうことですの? 教えて」



そ・・・そうだった! その話をしてたんだった!


あたしは浄火に向かって再び怖い目をして凄んでみせた。


「なんで部外者の浄火が、その人物に心当たりがあんのよ?」