「嘘よ。そんなの嘘。だって・・・」


「お岩さん・・・」


「だって、あたしの大好きなお父ちゃんは、そんなことする男じゃないもの・・・」



ぼうっとした表情の目が、みるみる潤んだ。


大きく涙が盛り上がり、そのまま両の目尻からつぅっと落ちる。


ポロポロ・・・次々と涙が流れた。


人に泣き顔を見せたがらないお岩さんが、隠すことも忘れて泣いている。



・・・・・・仲の良い親子だった。


おじさんは、とっても良い人で。


強くて、豪快で、明るくて、優しい人だった。


泣いていたあたしに、梅干しおにぎりをたくさん食べさせてくれて。


土の匂いのする、大きくて堅い手の平で頭を撫でてくれた。


あの温かさをあたしは今でも覚えている。



「嘘だよね? お父ちゃん」


「・・・にー・・・?」


「こんなの、嘘だよね?」


「にー。にー。にー」


お岩さんの腕の中で、子猫ちゃんが鳴いた。


流れる涙に合わせて、心配そうに顔を見上げて何度も鳴いている。


「こんなの全部・・・嘘っぱちだって、言ってよぉぉ・・・お父ちゃん・・・」



クシャクシャに泣き崩れたお岩さんが、子猫ちゃんをギュッと抱きしめる。


子猫ちゃんはお岩さんの頬の涙を懸命に舐めて、慰めていた。