神様修行はじめます! 其の四


いっそ知らない、まま、に・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・。


だから・・・彼は守りたかったんだ。


なんとか、少しでもお岩さんの受ける傷を軽く済ませようと。


だから、だからセバスチャンさんは・・・・・・。



キッチリと後ろで結わえられている黒髪の、あの後ろ姿を思い出す。


お岩さんから遠ざかりながら、どんな思いでいたのだろうか。


いつもいつも、誰にも本音を語ろうとしない彼は。



・・・どうしてなんだろう?


どうしていつもいつも、このふたりはこんなにも苦しむんだろう?



「わたくしの・・・父が・・・」


青白い顔のお岩さんの唇が、小さく動く。


「父が、セバスチャンの母親と通じていたと・・・?」


ぷるぷると小刻みに、その頭が左右に動いた。



「そんなこと、ありえませんわ。だって父は、わたくしを、家族を裏切ったりしないもの」


「岩よ、酷な言葉じゃが・・・人の心も一生も、一面だけでは語られぬ」


「・・・・・・・・・・・・」


「お前の父にも、父親以外の面があった。ということであろうよ」



お岩さんは世にも悲壮な顔で、絹糸の言葉を聞いている。


そして、もう限界のようにヘタンと尻もちをついてしまった。


魂が抜けたように虚ろな目をして、ブツブツと繰り返す。