子猫ちゃんが興奮した様子で、甲高い声で鳴き続ける。
「にー! にー! にぃぃー!」
「小娘ー。いったいどこをほっつき歩いておるかー」
ほっつき歩いてないよ。隠れてるんだってば。
なのに大声出して呼ばないでよ。まったくもう。
あたしは慌てて木戸に駆け寄り、乱暴に開けた。
「絹糸、どうしたってのよ? 門川君のところに居るはずじゃ・・・ あれ? いない?」
あたしはキョロキョロと忙しく左右を見た。
その場にいるはずの絹糸の姿が、見当たらない。
でも確かに今、聞こえたよね? 絹糸の声。
「絹糸? どこ?」
「おお、やれやれ。そこにおったのか」
「そこって・・・あんたはどこにいんの?」
「上じゃ。上」
上? ああ、変化して空を飛んでいるのね?
と思って空を見上げたけれど、やっぱりどこにもいない。
っていうより、さっきから妙に近い場所から聞こえてくる気がするんだけど。声が。
「下じゃ。下」
「下ぁ??」
なんなの? 上って言ったり下って言ったり。
しかも、言われた通り視点を下げても、やっぱり絹糸はどこにもいないし。
見えるのは桜の木と、枝にとまったウグイスが一羽だけ。
「どこにいるの?」
「やっと見つけたか。小娘よ、よく見ろ」
「はあ? 見ろって・・・?」
「よおおく、見よ」
枝の上のウグイスのクチバシが、人語を話しているかのようにパカパカと開いている。
・・・・・・・・・・・・。
え・・・? ま、まさか・・・?
「我じゃ。絹糸じゃ」
「・・・えーーー!?」