神様修行はじめます! 其の四


少しの間ためらって、あたしはお岩さんの後を追った。


そっとしておく方がいいのかと一瞬考えたけれど。


でもやっぱりこのまま見過ごせないよ! ほっとけない!



「しま子、ついておいで! お岩さんを追いかけなきゃ!」


走りながら後ろを振り返り、しま子に叫んだ。


呼ばれたしま子が慌ててドスドスついて来る。



視界の向こうに、セバスチャンさんの後ろ姿が見えた。


いつも通りの背筋の伸びた背中からは、彼の心中はやっぱり読み取れない。


あの人は・・・いつも、自分の素顔をさらさないんだ・・・。


あたしは視線を前に戻し、必死に走った。



ドレスのすそを抱えあげて、前のめりになって走るお岩さんの姿が見えてきた。


「お岩さん!」

「来ないで!」


鋭い語気に、うっと一瞬ひるんでしまう。


うぅ、やっぱりこんな時は誰とも会いたくないのかな・・・。


でも、 『あ、そう? うん分かったじゃーねー』 とは、いかないでしょ!


ただの失恋とは事情が違うんだから、心配なんだよぉ!



「お岩さん! お願い止まって!」


と叫んだ瞬間、お岩さんがドレスのすそを踏んづけた。


―― ズッザアァァーーーーーッ!!


・・・・・・・・・・・・


あ・・・・・・


あたしとしま子は、口をポカンと開けて思わず立ち止まってしまった。


お、お岩さん・・・転んじゃった・・・・・・。