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ズンッと辺り一帯の空気が重くなった。
あたしの心臓も、重苦しい嫌な音をたてる。
それはこれ以上ないほどの、ハッキリとした拒絶の言葉だった。
お岩さんの告白に対する、拒否・・・
いや。『はねつける』といってもいいほどの、強い拒絶の意思表示だ。
あたしはセバスチャンさんの去って行く背中と、それを凝視するお岩さんを交互に見比べた。
混乱してしまって、どうすればいいのか分からない。
セバスチャンさんに、行くなと言うべきなのか。
そして彼を責めるべきなのか、そんな権利があるものなのか。
でも、黙ってこのまま行かせてしまっていいものか。
泣きそうなお岩さんの、鼻の頭と両目がジワリと赤く染まる。
セバスチャンさんを見つめる目に、涙が盛り上がって・・・
それが崩れる寸前、彼女はセバスチャンさんとは逆方向へと脱兎のごとくに駆け出した。
ふたりは背を向け合って、離れていく。
乱れ去る足音と、ゆっくりと進み去る足音を聞きながら、あたしはオロオロするばかり。
お、お岩さん・・・セバスチャンさん・・・!
まさか。このふたりが背中を向け合う日が来るなんて・・・。


