「セバスチャンさん、お岩さんの行き先に心当たりある?」
「はい。ございます」
当然のようにアッサリ言われてしまった。
セバスチャンさんとお岩さんは、ずいぶん長い付き合いだものね。
彼にとって、お岩さんの行動なんて手に取るように読めてしまうんだろう。
・・・でも、それなら・・・・・・
それなら、お岩さんの心が傷ついていることだって、読めているだろうに。
あたしは、チラリと横目でこの人の顔を盗み見た。
銀色に光る刃物を連想させるような、美しく整った横顔を。
彼とお岩さんは、固い絆で結ばれた同志だと思っていた。
お互いがお互いを一番に信頼し合う、理想的な繋がりだと感じていたのに。
『わたくしめは、ジュエル様の執事ではありません。里の参謀です』
その言葉は確かに正論だと思う。
セバスチャンさんは、お岩さんの個人秘書でもなんでもない。
だから元々、彼の役目は里を守ることであって、お岩さん個人を守ることじゃない。
言われてみればその通りなんだ。
セバスチャンさんは何も間違っていない。自分の務めを果たしているだけ。
だけど・・・・・・。
それでも何の迷いも無く、彼がお岩さんより里を選んだことを・・・
あたしは、どうしても心の片隅で責めてしまうんだ・・・。
セバスチャンさんが何を思っているのか読み取ろうとしたけれど。
でもその美貌の奥に潜む感情の片鱗は、やっぱり少しも伺えなかった。


