神様修行はじめます! 其の四


「セバスチャンさん、お岩さんの行き先に心当たりある?」


「はい。ございます」


当然のようにアッサリ言われてしまった。


セバスチャンさんとお岩さんは、ずいぶん長い付き合いだものね。


彼にとって、お岩さんの行動なんて手に取るように読めてしまうんだろう。


・・・でも、それなら・・・・・・


それなら、お岩さんの心が傷ついていることだって、読めているだろうに。



あたしは、チラリと横目でこの人の顔を盗み見た。


銀色に光る刃物を連想させるような、美しく整った横顔を。


彼とお岩さんは、固い絆で結ばれた同志だと思っていた。


お互いがお互いを一番に信頼し合う、理想的な繋がりだと感じていたのに。



『わたくしめは、ジュエル様の執事ではありません。里の参謀です』



その言葉は確かに正論だと思う。


セバスチャンさんは、お岩さんの個人秘書でもなんでもない。


だから元々、彼の役目は里を守ることであって、お岩さん個人を守ることじゃない。


言われてみればその通りなんだ。


セバスチャンさんは何も間違っていない。自分の務めを果たしているだけ。


だけど・・・・・・。



それでも何の迷いも無く、彼がお岩さんより里を選んだことを・・・


あたしは、どうしても心の片隅で責めてしまうんだ・・・。



セバスチャンさんが何を思っているのか読み取ろうとしたけれど。


でもその美貌の奥に潜む感情の片鱗は、やっぱり少しも伺えなかった。