「・・・大変、御見苦しい所をお見せしてしまいました」
身を起こしたセバスチャンさんが、アスコットタイを直しながら謝罪する。
「申し訳ございませんでした。成重様、皆様」
「あ・・・いや・・・」
「ジュエル様を呼び戻して参ります。少々お待ちくださいませ」
肩口の埃を手で軽く払い、彼は優雅に立ち上がった。
「浄火様」
「・・・・・・あ?」
「わたくしめが席を外している間、成重様のご対応をお願いいたします」
「あ!? オレがかよ!?」
「よろしくお願いいたします」
丁寧に頭を下げて依頼しているわりには、しっかり問答無用。
そしてセバスチャンさんは、足早に部屋を出て行った。
丸投げされて情けない顔をしている浄火を尻目に、あたしも急いで後を追う。
「セバスチャンさん、あたしも行く!」
「お、おい里緒!? オレを置いていくなよ!」
「浄火、後はよろしく!」
「よろしくされても困・・・おい、赤鬼まで行っちまうのか!?」
「うああ、うあああー」
「いや、だから、よろしくされても困るんだって!」
あたしとしま子とセバスチャンさんが、並んで廊下を小走りに進む。
お岩さん、どこに行ったんだろう?
まさか失踪とかするつもりじゃないよね?
いや、それならまだしも、あの子作りマシーンにジュリエッタ達をけしかけたりしたら、どうしよう。
・・・・・・・・・・・・。
それはそれで、見ものか。


