神様修行はじめます! 其の四


さしものセバスチャンさんの綺麗な姿勢も、畳の上に崩れ落ちる。


お岩さんは容赦なく、両腕で彼の体をめちゃめちゃに殴り続けた。


「あんたは! あんたは! あんたは!」


制御不能のロボットみたいに、連続で殴打しながら怒鳴っている。


「そんなに・・・あたしを他の誰かと結婚させたいの!?」



あたしも、成重さんも、浄火も、しま子も。


全員、目の前のこの状況についていけない。


なんの反応もできず、目を丸くしてポカンと見守っているだけだ。



セバスチャンさんも、抵抗もせずに黙って殴られ続けている。


お岩さんは彼の黒いアスコットタイを鷲づかみにし、力任せにグィッと引き寄せた。


そして彼の顔に向かって、ツバと怒声を浴びせかける。



「あたしは絶対に、死んでも、誰とも結婚なんかしないからね!・・・分かったかあぁぁー!」



無抵抗のセバスチャンさんを畳に叩き付け、お岩さんは部屋を飛び出した。


韋駄天走りに廊下の向こうに走り去る。


あたしは口を開けたまま、その後ろ姿をぼう然と見送った。



・・・・・・・・・・・・。


そう・・・・・・・・・だよね。


うん、そうだよ。これがお岩さんだよ。


不幸な境遇に、身も世も無く泣き崩れるだけの、哀れな女。


そーんなキャラじゃないんだよね。あの人。