せめて頭の中で、引っくり返った因業ババの姿を想像した。
・・・・・・あ、ちょっとスッキリ♪
「来い」
聞き覚えのある声で、たったひと言。
それだけ言って、因業ババはクルリと背を向けた。
そして綺麗な姿勢でスタスタと、前を向いて歩いて行ってしまう。
こ、こら待て! それじゃますます足が届かないじゃん!
危険を察知して逃亡か!? この卑怯者!
沈没船の中のネズミかお前は!
「ちょっと! どこ行くのよ!」
ダンっと床板を踏み鳴らし、あたしは叫んだ。
因業ババは立ち止まり、顔をこちらへチラリと向ける。
「どこへ? 聞かずとも知っておろうが」
「そんなの知らないよ!」
「大広間だ」
あ、そっか。あたし大広間に呼ばれてるんだっけ。
うん。そーいや、そうだった。
・・・・・・じゃなくて!
「何の用があるっての!?」
「ここで聞かずとも、行けば分かる」
「理由を教えなきゃ、あたし絶対に行かないからねーだ!」
聞いたからって、行く気はないけどさ!
あんたが係わってると分かった以上、決定的に行きたくなくなったもん!
三歳児みたいに、床に寝っ転がって泣きわめいて拒否してやる!
あたしはアゴを突き出し、さも憎ったらしい顔を見せつけてやった。
凍雨くんが下からこっちを盗み見ながら、口をパクパク動かしている。
『がんばれ! 負けるな天内さん!』
・・・うん! 応援ありがとーー!


