「申し訳ございません成重様。ジュエル様は、食あたりを患っておりますもので」
セバスチャンさんが、かなり無理のある言い訳をして謝った。
・・・別に食あたりだからって、押し入れの中には閉じこもらないと思うけど。
成重さんも苦笑いしながら気をつかう。
「いいんだ遥峰君。お岩殿の気持ちは私も分かるよ」
後ろで一本に結わえた、背中に届くほど長い髪を揺らして彼は神妙な顔になった。
「せめて父の代わりに謝罪に訪れたんだ。お岩殿、申し訳ない」
本当にすまなそうに、ふすまに向かって頭を下げながら謝っている。
たぶん・・・悪い人ではないんだろうな。
物腰も柔らかくて穏やかだし。態度も控えめだし。
あんな傲慢な父親から生まれたのに、腰も低い。
十四人も生まれているうちに、だんだん毒が薄まったのかな?
門川君のお兄さんもそうだったけど、親が毒親だと、子どもは本当に大変な目にあう。
この成重さんって人も、あの親のせいでさんざん苦労させられてきたクチなんだろう。
「父が上層部に届けを出した件は、事実だ。今頃はもう認可の手続きが回っていると思う」
「さようでございますか」
セバスチャンさんは静かにそう答えた。
でも頭の中は、凄まじいスピードで色んなことをシミュレーションしているはずだ。
この事態を、なんとか切り抜くための策を練っている。
でも・・・良い策があるんだろうか?


