お岩さんも驚いて、ピクリと体を震わせる。
あたしも音をたてて息を飲んでしまって、慌てて口元を手で押さえた。
は・・・? な、なにそれどういう意味?
「実はのぉ、つねづね権田原の一族とは、深い繋がりをもちたいと考えておったのじゃよ」
長老は、ショボショボの目で柔和に笑いながら話を続ける。
「ぜひとも、お岩殿をわが一族の嫁に欲しいと考えておったのじゃ」
お、おいおい、ちょっと待ってよ、おい、おじーちゃん!
あなた、あたしに難クセ付けて、里から引きずり出すために来たんじゃないの!?
あたしと浄火は、眉間にシワを寄せてお互いの顔を見合った。
そして、お岩さんの様子を伺う。
お岩さんは緊張した顔で、無言のまま成り行きをじっと見守っていた。
その張りつめた空気に、声をかけることもできない。
「岩殿が当主では、嫁にもらうことは叶わぬ。しかし、婿を取るというのであれば・・・」
「ご子息、成重様を、わが一族の婿にくださる・・・という事にございますね?」
瞬時に落ち着きを取り戻したセバスチャンさんが、息子の方を見た。
父親に似た、印象の弱い細い目の彼は、なにも言わずにうつむいたまま。
自己主張するでもなく、ただ黙って座っているばかり。
いかにも大物の父親に忠実な、操り人形そのものだった。
そうか、それでこの人を連れて来たんだ。
十四番めの、影の薄い、一族の後を継ぐ可能性なんてゼロの息子。
親の言いなりになるより他に、生きていく道は無い息子を。


