神様修行はじめます! 其の四


黒と見まごうばかりに、濃い灰色の地の着物。


細かい白い桜の花びら模様が、贅沢に染め抜かれている。


上品に押さえた光を放つ、銀糸の豪華な帯。


洒落ものの、細い朱色の帯締めが、帯の存在感を引き立てる。


襟元からのぞく、うっすらと桃色に染まる半襟。



・・・くっそー、さすが着物はいい趣味してる。


いい根性もしてるけどね! あんたって!



あたしの目は、着物から肝心の顔に映った。


明治や大正時代の女性のような、大きく前髪をふくらませた髪型。


化粧も白塗りじゃなく、普通に肌色のおしろいをつけている。


ハッキリとした二重まぶたの目。


ほんとに目が大きい。涙袋もふっくらとしている。


思わず引き込まれそうなほど、強い力を持った目だ。



・・・目尻に、カラスの足跡みたいな小ジワがクッキリだけどね!



今までに見た門川の身分の高い女性たちとは、微妙に雰囲気が違う。


比較的、現代的な装いをしているせいだろう。


この女がウルトラ強欲因業ババか。ここで会ったが百年目!


そう思いながら、あたしは密かに歯ぎしりした。



今度会ったら、さり気なく足を引っかけて、絶対に腹いせしてやろうと決意してたのに!


これじゃ足が届かないじゃん! 距離がありすぎる!


あぁでも、引っかけてやりたい! 


この女、盛大にすっ転ばしたい! ズデーンと!