「当主の容体は、いかがかのぉ?」
年寄りの男が、しゃがれた声でセキ込みながら尋ねている。
セバスチャンさんが目を伏せながら、丁寧に答えた。
「まだ復調には時間がかかるかと。わざわざのお見舞い、御礼申し上げます」
「権田原は、重要な一族じゃ。当主には一日も早く回復してもらわねばの」
「痛み入ります」
「うむうむ。くれぐれも大事にするようにな」
そう言って年寄りの男は、またゴホゴホとセキ込んだ。
さっきからずっと空咳を連発してる。
小柄で背中が丸まった小太りな、この人が大物長老か・・・。
「ねぇお岩さん、この人、見たことある?」
小声でお岩さんに聞いてみた。
お岩さんは首を横に振り、小声で答える。
「権田原の地位は、高くはありませんもの。あまりに大物の相手とは、面識がありませんわ」
そっか・・・。ということは、やっぱり大物なんだ。このおじいちゃん。
でも言っちゃなんだけど、なーんか威厳ないなぁ。
丸顔で、目がショボショボしてて、シワだらけの普通のおじいちゃんにしか見えない。
おまけにセキばっかりして、具合悪そうね。
人のお見舞いしてる場合なのかな? 早く家帰って休んだら?
「遥峰君、私のことは覚えているだろうか?」
大物長老の横に座っている若い男の人が、セバスチャンさんに話しかけた。
「君とは、同じ学問所だったんだ。私は君ほど優秀ではなくて、目立たぬ存在だったけれど」


