新米の術師たちは、困った様子で顔を見合わせている。
さすがに絹糸を相手に、強気の態度には出られないんだろう。
それを分かっている絹糸は、さも怒ったような声で繰り返した。
「なにをグズグスしておるかっ。はよう、戻って理由を・・・・」
「ここでその理由を知る必要は、ない」
突然あたしの背後から、聞いたことのある女性の声がした。
術師たちが一斉に床にヒザをつき、声の主に向かって平伏する。
凍雨くんまでが慌てて平伏した。
「来れば分かる。その方が、話は早い」
声を聞いた途端にあたしの体が、電気が走ったようにビリリィッ! と反応する。
ま、まさか・・・・・・
この声は!
(ウルトラ強欲因業ババーーー!?)
あの、座り女の雛型の事件で。
あたしたち全員を苦しめ、踏みにじり、陥れた。
そして敵味方のおかまいなしに、心や命までも、もてあそんだ・・・
敵方の長老のひとり、『蜘蛛の糸』を操るババ!
間違いない! 最低の中年女の声だっ!!
あたしは勢いよく振り返った。
危機感をビシバシ込めた両目に、中年の女が映る。
お供らしき女性をふたり従えて、廊下のど真ん中に突っ立ってる女。
見た瞬間、あたしの全身に、メラメラと敵対意識が湧き上がってきた。
あんたがそうだね!? 間違いない!
だってこの中で一番、偉っそーなオーラが漂ってる!
あの時は御簾越しだったから、顔はまったく見られなかったけど。
ついにご対面だ! その悪人顔、とーっくりと拝ませてもらおうじゃないの!


