もう一度耳に受話器を当ててみたが、やはり何も聞こえない。


もしかして、故障なのかな?


私は諦めて電話を切った。


ピンポーン! ピンポーン!

「あ、はいはい」


誰だろう?


小走りに玄関に向かう。


カチャ。

ぎいぃっ――。


重いスチール製のドアをゆっくり開けた。


廊下は既に、闇に包まれている。


常備灯の微かな明かりの中に、黒い人影が立っていた。


「あ――」