「この校舎に有栖川らしき人はいなかった。でもB校舎にひとりだけ……。怪しい人影がウロウロしてた」

「……黒いフードを被った人?」

「篠原も見たのか?」


俺が小さく頷くと、じゃあ話が早いと諏訪野が再びドアを開けようとしたから、それを渡辺が止めた。


「ま、待って!ここにいれば安全なのよ?無計画に教室を出るなんて危険すぎる」

「あの人形はどうせ俺たちを全員殺すつもりだよ。だったらわざわざアイツの放送なんて待ってやる理由はねーよ」


渡辺の言っていることも諏訪野の言っていることも間違ってない。


ここに入れば少なくともオモチャになったクラスメイトに襲われることはない。

だけど、どうせアリスは教室に留まらせておくことはしない。

また理不尽な放送があれば、すぐに廊下に出ていくことになるだろう。