どうやら今村は鬼ごっこの最中もずっとここにいたらしい。

まあ、今の状態じゃゲームの主旨さえ理解できてなさそうだけど。


「この状況で逃げなかった人が生き残るなんて不公平よ!」

「はは、それはただ運が良かっただけでしょ」


また渡辺と日野沢の言い合いが始まった。


「じゃあ、聞くけど。死んだ古澤さんや笹谷さん。鈴木くんや寺田くんの首を切ったのはアンタでしょ?」

「なんで?」

「あの4人はナイフを持ったクラスメイトに身体を刺されて死んだ。私が見た時はちゃんと首は付いてた」

「………」

「でも、次に見た時はなかったっ!」


う……、と口を押さえながら渡辺が泣いていた。


すると日野沢は座っていた腰を上げて、おにぎりの袋をゴミ箱に捨てた。


「ああ、あの汚い嘔吐物は渡辺さんのだったんだ」

「なっ……」

「廊下で吐くなんて行儀が悪いよ?それに私が4人の首を取ったのは新しいオモチャを生まないため。それともよみがえって感動の再会ができたほうが良かったのかな?」


渡辺は日野沢の言葉になにも言えなくなっていた。


日野沢を一緒になって責められないのは俺も同じだからだ。

あのあと、残っていた田上と江口の胸に俺は包丁を突き刺した。


変わり果てた姿で眠るクラスメイトたちを見て、涙は出なかった。

涙の代わりにもう襲われないという安心感だけが、ひどく心にまとわりついた。