はじまりのアリス



「うわあああ!!」

と、その時。また校舎に悲鳴が聞こえた。

少し腰を上げて図書室の窓を覗くと、正面の校舎の廊下を寺田が全力で走っていた。

その後ろには斧のようなものを持ったクラスメイトの姿。


あれは菊地と高橋だ。

寺田とは野球部で一緒だった仲間なのに、もうその記憶はないみたいに寺田を追っている。


「潤……ど、どうしよう」

美織の言いたいことは分かっている。


〝あのままじゃ殺されるから助けにいかないと〟 

俺は手に持っている出刃包丁を強く握った。


俺の足ならあそこまで3分あれば行ける。でも美織を連れていくわけには行かないし、ここにひとりで置いていけない。


「もう誰も死んでほしくないよ。だから……」

と、美織が俺の洋服を掴んだ。


カタッ。

その瞬間、誰もいないはずの図書室から物音が。