あの時、いつも控えめな有栖川は女子の図書委員に立候補して。一緒に委員会に出ることも多かった。


「図書委員会ってこの図書室でやってたよね」

「うん。でも俺ほとんど寝てるだけだったし仕事なんて全部有栖川に任せちゃってたけど」


1年の時はクラスでいじめはなかったし、わりと平和に過ごしてた。

今村のような性格に癖のあるヤツも、諏訪野みたいな不良もあの頃はクラスメイトにいなかったから。


「……私、有栖川さんとあんまり話したことなかったけど。潤は委員会の時どんな話しをしてたの?」

「……どんなって」

俺もそんなに長く会話なんてしたことがない。

有栖川は控えめな性格だし、俺もペラペラと喋るタイプじゃなかったから。


筆記用具忘れた時に貸してくれたり、俺が寝てて怒られそうな時は肩を叩いてくれたり。

『篠原くん。これ私がやっておくね』と委員会で任された雑務は全部引き受けてくれた。


「……有栖川って今思えば優しいヤツだったんだよな」